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小児科医ママかつNICUonline管理者の育児、診療日記です

ちょっと長いおしゃぶり論 おしゃぶりをする赤ちゃんは可愛いけれど、泣き止むとか、虫歯とかどう考えたらいいものか

こんにちは
今日はおしゃぶりの話をしましょうね。
 
おしゃぶりが、いいとか悪いとか、ネット上で情報も錯綜しているし、
おしゃぶりをしている赤ちゃんを見ると、なんとも不思議な感覚になる小児科医として、
ちょっとおしゃぶりについて調べてまとめてみました。
 
おしゃぶりの使用についての結論は
 『有益性投与』です。
 
どういうことかっていうと、
『使うと悪影響があるかもしれないが、それを使わないことによるデメリットを考えれば、使ったほうが有益だ』ってことです。
 
つまり
おしゃぶりは、基本はいらないけれど、もし使うなら、
『メリットを生かしつつ、デメリットをできるだけ抑えて使用する』のがいいということになりますね。
 
では、いわゆるおしゃぶりの利点と欠点について、一つずつ検証してみましょうか。
 
★おしゃぶりの利点と世に言われていること
メリット①赤ちゃんの精神安定作用(ホント)
     寝つきが良くなる?(ホント)
     泣き止む?(ホント)
     グズったときに治る?(ホント)
メリット②乳幼児突然死症候群SIDS)の予防になる?(ホント)
メリット③鼻呼吸が促進される(口呼吸の予防になる)?(嘘)
メリット④舌や顎の発達が促進される?(嘘)
 
★おしゃぶりの欠点
デメリット①歯並びが悪くなる?(使い方によってはホント)
      出っ歯になる?(使い方によってはホント)
      虫歯になる?(使い方によってはホント)
      開咬になる?(使い方によってはホント)
デメリット②衛生面で気になる?(人による)
デメリット③母乳育児に悪影響?(ホント)
デメリット④親子のふれあいが減る?(ほとんどは嘘)
      子供がどうして泣いているのか考えないで使用する(人による)
      あやすのが減る、言葉かけが減る(人による)
      発語の機会が減る(嘘)
 
さて各論
メリット①赤ちゃんの精神安定作用、寝つきが良くなる?、泣き止む?、グズったときに治る?
まずはこれはおよそ合っていそうですね。
おしゃぶりだけでなく、指しゃぶりも総合して考えると、
赤ちゃんは胎内にいる時から指をしゃぶる動作が見られます。
それは発達上もとても自然な行為です。指を口に入れて吸うのは、通常7〜9割くらいの赤ちゃんに見られます。
その頻度は4〜5歳までで自然となくなって落ち着きます。
つまり、赤ちゃんは落ち着くので、自然と寝つきが良くなったり、ぐずりが減ったりしますね。
 
メリット②乳幼児突然死症候群(SIDS)の予防になる?
2011年にアメリカ小児科学会が昼寝や就寝時におしゃぶりを使用するとSIDSの予防効果があると勧告を出しました。メカニズムはまだ不明ですが、研究調査によると、おしゃぶりでSIDSの発症の確率が抑えられる結果のようです。おしゃぶりが口から落ちても予防効果が持続するそうで、
私の印象ではなんとも不思議な結果です。
 
この話は前回のSIDSの項目で書いた母乳育児の項目と矛盾するんです。
 おしゃぶりは母乳育児には幾分悪影響です。
 母乳育児はSIDSを予防します。
 おしゃぶりはSIDSを予防します。
変な三角関係ですね。
 
ちなみに、ラクテーションコンサルタント協会という、世界的な母乳育児推進団体では
母乳育児をするにあたり、おしゃぶりはできるだけ避けたいもので、
アメリカ小児科学会のこの勧告に異論を唱えています。
 
現実的には出産直後におしゃぶりを使用すると、乳頭混乱を起こしてしまうため、生後2ヶ月以降から使用してみるようにしてください。寝ている間におしゃぶりが外れてし合った時は、無理に口に戻さず外したままにしておくようにしましょう。
なんて、言われていますね。
 
次。
メリット③鼻呼吸が促進される(口呼吸の予防になる)?(嘘)
メリット④舌や顎の発達が促進される?(嘘)
についてはどうでしょうか。
おしゃぶりの商品パッケージに印刷されていますね。
鼻呼吸の促進や、顔の発達の促進するという、医学的根拠は調べても調べても見つかりませんでした。
おしゃぶりを売りたい側や正当化したい側の意見なんでしょうね。
 
ところで、おしゃぶりと対比されるのが指しゃぶりです。
が、
指しゃぶりの方が、統計学的には長く続くとされています。
2歳くらいまでの指しゃぶりは、比較的許容される世の中ですが、
3歳くらいになってオムツが取れる時期になると、恥ずかしいとか、人目が気になったり、
幼稚園入園に当たって気になってくる時期ですね。
 
では
おしゃぶりの欠点ですが、
 
デメリット①歯並びが悪くなる?(使い方によってはホント)
      出っ歯になる?(使い方によってはホント)
      虫歯になる?(使い方によってはホント)
      開咬になる?(使い方によってはホント)
デメリット②衛生面で気になる?(人による)
デメリット③母乳育児に悪影響?(ホント)
デメリット④親子のふれあいが減る?(ほとんどは嘘)
      子供がどうして泣いているのか考えないで使用する(人による)
      あやすのが減る、言葉かけが減る(人による)
      発語の機会が減る(嘘)
デメリット⑤中耳炎が増える(まあまあホント)
 
デメリット①歯並びが悪くなる、出っ歯、虫歯、開咬
について
 
出っ歯について、歯科用語では上顎前突と言うようですが、おしゃぶりで優位に出っ歯になるようです。
開咬というのは、「イー」の口をした時に、前歯の上下の間に隙間ができてしまう状態を言うようですが、
これもおしゃぶりとの間に優位に相関があるようです。
おしゃぶりや指しゃぶりの期間が長ければ長いほど悪くなるようです。4歳を超えるとより顕著に悪影響が出ると言う研究があります。
しかし、逆に長期におしゃぶりを使わなければ、(2歳くらいで、おしゃぶりをやめると)
また元に戻るようなので、自然におしゃぶり離れが済んだ場合には、改善の余地がありそうですね。
研究によると元に戻るのに2〜3年かかるようです。
変形はおしゃぶりよりも指しゃぶりの方が顕著に出るようです。
 
虫歯について
虫歯単独で考えると、おしゃぶりと虫歯の関係はないと言われています。
Pacifier use and early childhood caries: an evidence-based study of the literature.
J Can Dent Assoc. 2003;69(1):16.
歯並びが悪いと、ブラッシングでの磨き残しの頻度も増えるので、そういった2次災害的な虫歯のリスクってこともありそうですね。
 
デメリット②衛生面で気になる
 
新生児期は哺乳瓶を消毒したり、お風呂も沐浴だったり、
赤ちゃんって特別キレイにそーっと扱いましたよね。
 
その延長なのか、おしゃぶりは口からポロポロ落としやすいだとか、ホルダーでぶら下げていても、
あらゆるところと接触して不潔になりやすいとか、
衛生面が気になる人は多い気もします。
キレイなものに越したことはありませんが、
赤ちゃんって、自分でものをつかめるようになると、なんでも口に入れてデロデロにしてしまいますよね。
いろんな雑菌を舐めて免疫力を高めているとも言われますので、
そんな頃にはもちろん、哺乳瓶の消毒も不要ですし、あちこちハイハイした手をおしゃぶりしてても、
まあ、そんなもんなんです。
綺麗好きなお母さん達には堪え難い状態ですね。
 
デメリット③母乳育児に悪影響
 
母乳育児が軌道に乗るまでは、スキあらば乳房を吸わせる時期です。
この、頻回に吸う刺激とどのくらいの量を赤ちゃんが飲みとったかによって、母乳の分泌が調整されるので、
本来必要な乳頭への吸う刺激が、おしゃぶりに行ってしまうと、その分母乳の分泌が下がっってしまうリスクがあります。
母乳が軌道に乗って、十分分泌できる方は、そこでおしゃぶりを追加しても、さほど影響はありませんが、
もっともっと分泌を増やしたいお母さんには、おしゃぶりはやめといた方が無難ですね。
また、乳頭混乱という言葉があります。
母乳育児が軌道に乗る前に哺乳瓶の乳首を介して飲ませてしまうと、赤ちゃんが哺乳瓶に慣れてしまい
直接母乳を嫌がるようになります。
逆に、直接母乳のみだと、なかなか哺乳瓶から飲んでくれなくなります。これが乳頭混乱です。
哺乳瓶と乳房では母乳の供給の仕方が違いますからね
母乳がうまく飲み取れるようになる前に哺乳瓶を使うと、哺乳瓶の飲み方に慣れてしまい、
ママの乳首を吸わない→吸う刺激が伝わらない+乳房から母乳が除去されない→母乳の分泌が下がる、
という悪循環にはまってしまうわけ
そうなったら、メッチャ大変なんです。
 
デメリット④親子のふれあいが減る
      子供がどうして泣いているのか考えないで使用する
      あやすのが減る、言葉かけが減る
      発語の機会が減る
 
どうでしょうか?
個人の捉え方次第かと思いますが、私だけでしょうか。
おしゃぶりで精神安定している場合は赤ちゃんはやたら泣いたりしないかもしれません。
でも、赤ちゃんの要求はそれだけではないでしょう。
おしゃぶりが口に入っていたって、声が出ないわけではないので
言いたいことは容赦なく言いますし、
大きな声で泣きますよ。
おしゃぶり単独で短絡的にこう考えるのは、どうかなと思うわけです。
 
デメリット⑤中耳炎が増える
まあまあホントです。
ってのは、中耳炎が明らかに増えるわけではなく、中耳炎がおしゃぶりによって増えると言う研究もあるにはある、ってな程度です。
 
 
さて、最後に
吸うと言う仕草を
発達を追って考えてみましょう。
 
胎内生活〜非栄養学的吸啜の意味
70−90%の赤ちゃんは、胎内ですでに自分の指をしゃぶる行動が見られ、それは発達の正常な過程で起こることです。哺乳の練習をしているという説もありますが、どうでしょうね。そう考えるとホッコリしますよね。
例えば、まだ自分で飲むことができないくらい未熟な早産で生まれてしまった子でも、おしゃぶりはとても上手です。
その子たちは、胃にチューブを入れて、母乳やミルクを投与するのですが、その際に、おしゃぶりを併用することで、経口哺乳開始が早まるとか、うまくいくとかも言われていて、NICUで評価されていたりします。
 
新生児期〜なんでも吸い付く吸啜反射
生まれてすぐは、自分の手を意識的にうまく口まで持っていくことができません。
でも吸啜反射といって、なんでも口周りに来たものはチューチュー吸ってしまう本能があって、
偶然自分の手が口の近くにあると、吸ってしまいますね。
 
生後2~4ヶ月になると、自分の手や偶然握ってしまったものを口に持っていってしゃぶるようになります。
新生児期との違いは、偶然近くにあったものを吸うのではなくて、自ら口に持って行って吸うことです。
これは目と手の協調運動の学習や、色々な物を舐めてみて学んでいると言われています。
周囲の環境を舐めることで免疫の発達を促すとも言われてますね。
 
意思で掴む時期
もう少しすると、ちゃんと自分の意思でおもちゃをつかんだり、持ち替えたりします。
それも、なんでも口に持っていきますね。
個人差がありますが、よだれもとっても多い時期です。
よだれが多い子は虫歯になりにくいとされています。
 
1歳近くなると、ただただ口に持っていく時期は超えて、おもちゃの意味(どうやって遊ぶものなのか)がわかってきます。
そういう時期の指しゃぶりは眠い時や、なんとなく自分でやっていて落ち着くからと言われていますね。
おしゃぶりの習慣がある子はなかなかおしゃぶりが離せなくなってきます。
 
年齢が上がるとともにおしゃぶりや指しゃぶりの使用率は下がります。
長くても4−5歳と言われてますが、
おしゃぶりっ子を育てて見てと、
おしゃぶりや指しゃぶり大好きな子を外来で何人か見てると、
平均的なおしゃぶりの卒業はもう少し早く2歳代の印象です。
 
結局どうしたらいいのでしょうか?
小児科と小児歯科の保険検討委員会から、うまい推奨が出ていましたので抜粋します。
 
★発語や言葉を覚える1歳すぎになったら、常時使用しないようにおしゃぶりホルダーを外す
★遅くとも2歳半までに使用を中止するようにする
★おしゃぶりを使用している間も、声かけや一緒に遊ぶなどの子供のふれあいを大切にして、子供がしてほしいことや、したいことを満足させるように心がける。子育ての手抜きとし、便利性からだけでおしゃぶりを使用しないようにする
★おしゃぶりだけでなく、指しゃぶりも習慣づけないようにするには同じように声かけを心がける
★4歳以降になってもおしゃぶりが取れない場合は、情緒的な面を考慮してかかりつけの小児科医に相談することを勧める
 
Oral habits and orofacial development in children
2017 UpToDate
 
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